「鳥居」
鳥居について知りたければこの1冊。
「元木の石鳥居」はご存知ですか。
山形県山形市の市街地やや南東よりにある大きな石の鳥居で、現存する最古級の鳥居と考えられています。
太い柱とがっちりとした笠木(鳥居の一番上で横になって乗っている部分)、高さはそれほどなく、どことなくずんぐりとしていて素朴な印象を与えます。
材質は風化のしやすい凝灰岩の為、あちこちぽろぽろと欠けて穴が出来ていたりしますが、そのどっしりとした佇まいは、見ているとなんだかほわっとしてきます。
おそらく平安時代ごろに建てられたと考えられ、同じ山形県にある「成沢の石鳥居」「清池の石鳥居」とあわせて「最上の三鳥居」と呼ばれています。
日本には数多くの鳥居が存在し、日常の風景に溶け込んで何とはなしに目にしている事が多いですが、いつ頃から建てられるようになったのか、なぜ「鳥居」というのか、実ははっきりしたことは分かっていません。
その「鳥居」について書かれた本で、おそらく現在もっとも体系的かつ手に入りやすい本と言ったら、谷田博幸さんのその名もずばり『鳥居』(河出書房新社刊)でしょう。
鳥居の起源や名前についての謎、鳥居の構造、種類、ちょっと変わった鳥居など、遍く鳥居を網羅したまさに鳥居づくしの本です。
そして随所に見られる著者の「鳥居愛」・・・、たまの休みに神社廻りを心の癒しとしている私も見習わねばなりません。
ちなみに鳥居と聞いて思いだすのはやはり諸星大二郎さんの「闇の客人(まろうど)」(『諸星大二郎妖怪ハンター地の巻』集英社文庫収録)ではないでしょうか。
町興しのために復活させた古の祭り、その目玉とし建てられた七丈七尺(約23メートル)の大鳥居。しかし昔とは違う形で祭りが進行するに従い、数々の異変が起こりだす・・・。
祭りごとや神事に不用意に手を加える事の危うさと、かつての貧しい山村の切なる思いが心を打つ作品です。
ところで鳥居といえば神社、そして神社には当然神主さんがいらっしゃいます。
普段はあまり目にしない神主さんの知られざる日常を知りたい方は、瀬上あきらさんの『神主さんの日常』(マックガーデン刊)をおすすめします。
神社の婿嫁探し、普段の仕事、神主になるための実習など、意外と普通でやっぱり違う神主さんの日常が赤裸々に描かれています。
本書は埼玉県は奥秩父に鎮座する三峯神社のご協力で書かれています。深き山、木々が連なる標高1,100の神域にご参拝してみてはいかがですか。
最後に、神社といえばまずは「一の宮」という事で、全国の一の宮を1つにまとめた『ビジュアル神社総覧 全国一の宮めぐり』(学研)をご紹介します。
「一の宮」とはある地域の中で最も社格が高いとされる神社のことです。主に奈良時代の政治制度として採用されていた律令制にもとづいて決められたもので、今では全ての神社は平等とされていますが、以前の名残で現在も多くの神社が「一の宮」と名のっています。
それぞれの地域の「一の宮」を北は北海道から南は沖縄まで、こまかな地図とカラー写真はもとより各神社のご神徳が載せられているので、ガイドブックとしてとてもおすすめです。
何気なく訪れていた房総半島の南端にある洲崎(すのさき)神社が一の宮であることに驚き、かつて参拝した貫前(ぬきさき)神社の上り下りする階段にほくそ笑み、死ぬまでに一度は行きたい元伊勢籠(この)神社へと思いを馳せる。
そんな楽しみ方もできる1冊です。
《コラムで紹介した商品》

◆『鳥居』
価格:2,600円+税
発売:河出書房新社

◆『諸星大二郎妖怪ハンター地の巻』
価格:638円+税
発売:集英社文庫