「クレージーの無責任清水港」
“次郎長もの”が小説、映画、舞台、講談の題材になっていたのは、
昭和が終わるころまでだったような気がします。
「清水の侠客」、「次郎長親分の元」、「子分の大政」、「小政」、「森の石松」、「桶屋の鬼吉」他の活躍、
「金毘羅代参」や「黒駒の勝蔵」との争いなどの話は、とても面白いものです。
“次郎長もの”は、あらゆるところで題材にされていましたから、
一般大衆は次郎長の登場人物や話しの流れは解っていたんですね。
私も学生の頃、村上元三の名著『次郎長三国志』を読んで、一時侠客ものにハマった時期もありました。
ちなみに、この『次郎長三国志』は昭和29年にマキノ雅博監督によって映画化もされています。
この時、森の石松を演じた森繁久弥が一躍スターダムに駆け上がったんですね。
原作は、全9作に及ぶ人気シリーズにもなりました。
そんな人気の題材、”次郎長もの”にクレージーキャッツを当て込んだのが
今回ご紹介する「クレージーの無責任清水港」です。
クレージーの代名詞ともいえる「無責任」と名の付く最後の作品です。
最後の作品といってもまだクレージーは絶頂期。一つの時代の転換期だったんでしょう。
次郎長一家は次郎長(ハナ肇)、追分三五郎(植木等)、森の石松(谷啓)のいつものトップ3人で
他の4人は端役なんです。 クレージー全員で演じる一家も見てみたかったですね。
「クレージーの無責任清水港」の中でも傑作なのは、牢屋で三五郎と石松が出会い、酒を酌み交わすシーン。
石松のセリフとして有名な「酒飲みねえ、寿司食いねえ」を、三五郎が全て先にしゃべってしまいます。
石松は聞きながら「なんかおかしい」とさかんに首をひねり、
最後に「それ全部、俺のセリフじゃねえか」とつっこみます。
谷啓のリアクションのうまさで、必ず映画館が爆笑の渦に巻き込まれる、名シーンです。
また、劇中で披露される歌にも注目です。
先の牢屋のシーンで三五郎と石松が歌うのが「遺憾に存じます」。
この年の紅白でも歌われたエレキ調の名曲です。
レコードとは違ったアレンジが秀逸で、クレージー映画曲の中でも
喜劇ファンの人気ベスト10には入るのではないでしょうか。
歌は、クレージー映画に欠かせない要素のひとつです。
特に初期は、ミュージカルのように矢継ぎ早に歌い踊るシーンがありました。
クレージーキャッツが出したレコードは数十枚ありますが
昭和36年の「こりゃしゃくだった/スーダラ節」から
昭和41年の「なにがなんだかわからないのよ/シビレ節」まで
A,B面が両方ヒットするほど大衆に歌われていました。
初期から中期にかけては、レコードになった曲が映画でも頻繁に歌われました。
中期以降は映画の中だけのオリジナル曲が多くなってきました。
レコードとはアレンジが違ったり、歌詞が違ったりしていたため、リバイバル上映していた映画館では
小型ラジカセをしのばせて録音するファンまでいたりして・・・。いかに人気があったかがわかりますね。
「クレージーの無責任清水港」は、クレージー映画を量産した坪島孝監督が、
もっとも愛着のある映画と語っています。
クレージーの侠客ぶりと、披露される名曲を是非お楽しみください。
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